不動産に関る相続税。更正による還付事業。 (過払い相続税が戻ってくる。)
広大地評価がポイント
首都圏で土地をお持ちの方が相続となり、相続人が相続税を申告納税したが、納税額 が適正であったかどうか少々疑問を感じ、8年前に神奈川県不動産コンサルティング 協会の過大納税の還付業務に相談を寄せました。
不動産に関る相続税のうち、土地に関る相続税は、机上税務とはかけ離れた、全く分野の違う不動産調査実務を伴ないます。そのためこの作業が一番難しい税務計算といわれています。
机上での税務計算は平面的な見方になりがちです。土地は地図・測量図(高低差表示のない図面)上はフラット(平面)の上にあっても、実際現地は高低差があったり複 雑な形態をしていたりします。すぐに建物を建築できないことも多々あります。しかし、税務上の評価は概ね無視されます。土地が小さい場合はその違いが許容できる誤差?で済ますことができますが「広大地」ともなるとその差がとんでもない金額になります。
不動産(税)評価(財産評価)の仕方の基本的なものは、「路線価J 「倍率方式」で決めますが「形状」「道路接地状況」「他人の権利が関わっているか」「土壌汚染など特殊な条件J 等で評価が変わってきて減額されます。
その中でも特に「広大地」についてはその評価の仕方が非常に難しく、減額にあたり、難問となります。見落とされがちになります。それまでは「広大地」という財産評価上、その概念(評価基準)があいまいだったため税務行政側の対応もマチマチであったようで、平成16年の改正につながります。
平成16 年に財産評価基準が改正されました。これまでも面積が広い土地、つまり「広大」な土地を「広大地」と規定していました。しかし「広大地」が、バラパラに解釈されていたようです。「広大地」の条件は「その地域における標準的な宅地の面積よりも著しく広いこと。」としています。
三大都市圏(東京圏・名古屋圏・ 大阪圏)の市街化区域では500㎡、それ以外の市街化区域では1,000㎡以上です。市街化区域と市街化調整区域の区域区分が行われていない「非線引き都市計画区域」でも用途地域が定められていれば、市街化区域と同じ条件になります。用途地域が定められていない非線引き都市計画区域は、3,000㎡以上が広大地となります。要するに基準の広さ以上は特定行政庁の開発許可が必要になり、開発造成工事によりはじめて宅地として使えるようになるのです。もちろん土地が広いため各宅地のため道路(建物を建てる許可を得るため建築基準法上の道路に接していなければならない)も必要になります。土地を減歩しなければなりません。
「広大地」の財産評価基準(補正率0. 6以下)というのはつまり、「明日から建物を建てても良いですよ」という更地のことと考えるのが妥当と考えます。しかし、ここに開発工事費用の必要性との間で齟齬が生じるのではないでしょうか。基準以下の面積でも「広大地」として認められる場合があります。但し大規模な工場用地及び中高層マンション用地ではないことです。広い土地をそのまま利用できるからです。
8年前、相談をうけた相続税の還付については、当会の試算で更正額が約2,000万円ほどになり、実現できたら大きな還付額でした。
「広大地」評価については、不動産コンサルティング技能士・税理士・建築士(造成開発工事会社)とのコラボが必要となります。国家に寄与する多額納税者である相続人の相続税の適切で正確な納税額をアドバイスすることは現代社会の要請でもあると私どもは考えます。
残念ながら,受けました相談は期限の問題が生じ、(嘆願)還付期間は相続が開始されて5年10ケ月ということで(期限の1週間前に書面で申請)更正決定が出るまでに1ケ月はかかるとの説明で、この期間内に還付されないからと申請(嘆願)は棄却?ということになりました。
しかしながら騎に落ちないのは、申請書類や手続きが不完全な場合、補正を指示す るか、その後の申請の進め方を教示するか、税務署側に明白な説明があってもよかっ たことです。
この処分について不服がある場合はどうしたらよいのか、教示すべきだったのではな いかと考えます。今後の課題とともに神奈川県不動産コンサルティング協会として引き続き「広大地」 相続税の還『寸手続き業務をすすめていきます。
<補足>
通常、行政決定については行政手続法、行政不服審査法などで国民の権利利益を守 るとするセーフティネットがあるのですが、国税やその他の税については国税通則法(国税専門の手続き、不服申立ての法)に限定しており、ほとんどが行政不服審査法の適用除外になっています。税額が過大であった場合の更正の請求は国税通則法(不服申し立ては国税不服審判所)に従って行なわなければなりません。それで国民の利益を守るとしています。
因みに財産評価はあくまで行政庁内の内部の基準であって、一般論として、仮にその筋立ての合理性を上回る合理的な筋立てがある場合、より合理的な筋立ての方が有効となり、国民の権利利益を守るものとなります。
制度として、相続開始後、納税額の更正還付が可能なのは1 年10 ケ月で、その後、4年間は「嘆願」により還付が可能ということになっています。
しかし、国に関する債権債務の消滅時効が5 年10 ケ月と考えると「嘆願」という制度は少々無理やり設けた制度のような気がします。それも還付までの期間も含むとしている点は批半もあるでしょう。
併せて還付金の法的性格を考えたら、不当利得にあたると考えられるので、時効を5年と区切るのが良いかは裁判所判断(国家賠償事件の債務不履行で最高裁の判例もある)を待つしかないでしょう。
税理士の選び方については一考を要すると思われます。税理士は法人税、所得税、消費税など得意分野で忙殺され、まれに相続税業務があるという状態なので、手間隙かかる相続税に対しては得手不得手があるようです。また、一度評価方法に基づいて下した評価を他の税理士が減額変更するというのは大変難しいようです。
そこで、不動産相続税の過払いが心配な方にNPO 不動産コンサルティング協会の相談をお勧めします。当会の不動産コンサルティング技能士は自身の知恵と経験を駆使して精度の高い不動産がらみの相続税還付を実現できるよう日々研鎖しています。
(当協会の趣旨に賛同してくださる税理士の協カもいただきます0)
株式会社 関内地所 川崎五郎
株式会社 不動産情報館 仲宗根保