コンサルティング事例

借地権解除と抵当権

  • 2019.7.22
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◎法律実務研究『賃借権解除と抵当権』

相続申告迄のコンサル

依頼人Yさん(73歳)の御主人が突然病気で亡くなったのが平成12年の2月3日、Yさん夫婦は元々、横浜の生まれです。所有地は約600坪(1980㎡)の小地主でした。財産管理は、亡くなったご主人が全て管理をし奥様は何も解らず仕舞いで途方に暮れており知人の紹介で私の事務所に来ました。
私は、相続申告・登記の変更を知人のコンサルタントに手伝って貰い 9 月に税務申告を完
了しました。
本件の依頼時に調査費用30万円を預かり、コンサル業務契約を終結し300万円の報酬が必要の旨、伝えました。業務の難易度により多少の変更がある場合もある事を認めて貰い業務に着手しました。
所有地の内容を調査したところ3カ所に分散所有しており、そのうちの2カ所は住居地域で延ベ9軒に貸地しており、相場より安い地代の設定でありました。悪い事に、その中の2軒が度々、地代の滞納をし困惑しており、そのうち1軒は 1年間も滞納し、競売開始の決定がされ、現在は行方不明との事でした。
他の1カ所は賃貸駐車場(10台)と自宅に併用の賃貸店舗(2店)でしたが、店舗のうち1店は、家賃の滞納が10ケ月(¥100万円)ありました。
そこで、調査内容に基づいて内容を整理してYさんに企画提案を致しました。
①貸地の整理をする事。(借地人の意向調査のうえ、契約の更新、あるいは売却。)
②地積測量及び分筆登記をする事。(貸地の更新契約・底地の売却に備える)
③店舗契約解除の通知をする事。(まず話し合いを始め、場合によって内容証明通知)
④貸地の契約解除をする事。(顧問弁獲士を紹介し、地裁に提訴)
その結果
①については、2 軒は底地売却完了し,¥2100 万円を取得。他は更新手繰中。
②については、作業完了。
③については、合意解約成立。未納賃料¥100 万円は分割払いとし確約書を締結。
④については、1 審で地主勝訴の判決。金融機関が補助参加し 2 審へ控訴提起中。


相談事例『事件の経過』

*地主Ⅰより「所有してる土地1,980㎡の一部、約165㎡を借地人Kが地代を約3年もの間、滞納していて再三の催促にも拘らず一向に支払う意志を見せないのでどうしたらよいものか」と相談がありました。
*依頼を受けたコンサルティング会社Hは次の手順で業務を開始しました。

    1. 借地権の存する建物についての調査をはじめました。(法務局・市役所関係・他)
    2. 調査を開始後まもなく裁判所から競売開始決定通知が地主Ⅰに届きました。
    3. 建物が競売にかけられる事を知ったコンサルティング会社 H は、地主Ⅰさんに

①まず、内容証明郵便を賃借人 K 宛てに出すよう指示しました。(刑 1,6,10)
*「滞納してる地代の一括払いをして頂きたい」旨の通知。
*「長期の地代滞納のため土地賃貸借の解除を致します」旨の通知。
*「建物を収去して原状回復による明け渡しをして頂きたい」旨の通知。
②その後、賃借人は夜逃げをしてしまった。現在は暴力団が占有の状態。
ーーーーー<競売による入札はH13,2,13 に決定>ーーーーー

    1. 裁判所第 3 民事部へ上申書を提出
    2. コンサルティング会社 H はーーーーー>弁護士に依頼。共同案件として取組中
    3. 弁護士 N は次の手噸で業務進行中です。

①裁判所へ契約解除事件として提訴した。
②相手方(賃借人K)が行方不明のため公示送達(民訴110~113条)
③欠席裁判となった。(原告のみ証人尋問が行われた)
④判決により地主が勝訴(建物の収去・明け渡し)ーーー 2週間の公示期間。
⑤抵当権者が補助参加人(民訴42~46条)として控訴手続き開始(2 審へ)
****金融機関は地主Iより空白の借地承諾書を受け取っている。****
(焦点)
①賃借権解除・建物収去と抵当権の効力(一審では地主Ⅰが全面勝訴)
②補助参加人の控訴とその効力(強制執行停止・控訴申立金500万円)
③「強制執行は本案控訴事件の判決があるまでこれを停止する」
ーーーーー>2 蕃の高等裁判所へ
(参考)
補助参加・・・・民事訴訟法第42条
『訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。』


賃料延滞通知の承諾書面の効力

借地上に建物を建築する場合等において、建物を担保に入れて建築資金等の融資を受ける必要のあるときがあります。借主の建物に担保権を設定する立場に立つ金融機関等においては、担保権を行使する場合を考え競落人への借地権の移転が確実に行えるように、事前の手当てをしておきたいところです。
金融機関は賃料の不払いによる借地契約の解除を防止すべく、地代を、利害関係人として弁済する機会の確保を図る工夫が必要です。そこで、金融機関は借主を通じて貸主に対し、賃料の延滞が発生したときは、直ちに金融機関に通知することを確約する書面への署名、押印を求めることがよくあります。
この書面に地主が署名した場合に、いかなる効力が認められるかについては争いが有ります。一般的に、このような承諾書の記載内容は、貸主は延滞発生について金融機関に通知する事になっているだけのものが大半で、通知した場合、金融機関が賃料の代位弁済をしますと記載される事はありません。
こうした貸主ばかりが負担を負う記載をもって、貸主に金融機関に通知する法律上の義務があるとすることは出来ません。金融機関だけが一方的に担保権確保の利益を得て、貸主には利益が確保される保証がないからです。金融機関または借主が、貸主に対し承諾料といった対価を支払っていた場合は別として、前記のような承諾書面をもって貸主に法律上の義務があるとは言えません。東京地判平成 11,6,29 金法 1573 号 39 頁、反対東京高判平成
6,8,30 判時 1525 号 67 頁』
従って、貸主が通知をせずに借地契約を解除したとしても、解除権の行使が権利の濫用、信義則違反になるというものではありません。
金融機関や、融資の利益を得る借主側は、貸主に対し承諾料(賃料の延滞が発生した場合に、未払賃料に充当するという条件を付け一種の敷金の意味を持たせる工夫が考えられる)を支払うとか、貸主にもメリットのある内容で承諾書面を作成する対策が必要です。

sankaku
本牧不動産 高坂 登

活動予定・活動報告

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